美容系アンテナメディア PENTOSCISSOR ペントシザー

PENTOSCISSOR 美容系アンテナメディア

コラム

3倍近くのプレミア値がついたワックス

更新日:

こんにちは西川ゆすけです。

今回はちょっと前から耳にしてた興味深いお話を一つ。
そう、あれはメルカリという魔境でのお話でした・・・。




「ゆすけさん、知ってますか?」
その日いつもと同じようにお客さんの髪の毛を切ってるなか
お客さんはポツリと呟きました。

 

あのワックス、プレミアついてるらしいですよ

 

ああ、これは。

私はピーンときました。
その話はツイッター等でたまに耳にしていたからです。

「メルカリ……ですか?」
私は確認を取るかのように口にしました。
メルカリというのは、スマホアプリの一つで、誰でも簡単にフリーマーケットを楽しめるサービスです。
一言で言うなら魔境
電脳世界と現代の住人が産んだネットのディストピアと言えば簡単に伝わるかと思います(伝わらない)

そうです、とお客さんは静かに頷き、続けました。
「やはり知ってましたか……。では最高値を更新したことも……?」

 

それを聞いて私はギクリと手を止めたのを覚えています。

 

少し前のことですが、私が愛用していたワックスが、諸々の事情で廃盤となってしまい
新たに入手することができなくなっていました。
そのワックス、定価は2000円程でアマゾン等の最安値では1000円ちょっとのいわゆる普通の値段のものです。

プレミアがついた、というのはそのワックスがメルカリで2500円程で売買されたことがあるという情報の事だと思っていました。



実際その値段で売られてるのを目の当たりにしたことがあるのです。
しかし思いもよらぬ言葉が私の耳をスーッと撫でていきました。

「最高値……?」

値段があがったのでしょう。
2500円程のプレミア値から少しばかりの上乗せをされて……。

「3000円程ですか?随分と高くなりましたね……」
呆れるように首を振った私は、止まっていた手を動かし眉をひそめます。
2000円出せばお釣りが出ていたものが3000円になる、というのは複雑な想いがありました。

そんな私を横目に、お客さんは首を横に振ります。
「いえ……もっとです」と語気を強めます。
「まさか…3500円?4000円は流石に無いでしょう」

壊れる前のスカウター見てる状態の私は、想像を超える値段に対し怪訝な顔を浮かべます。
1500円で買えたワックスが3000円を越すなんて、今まで聞いたこともない。
無意識に止まっていた手に気付き、私は少しばかり手を早めます。

「4000、越します……」

軽快なBGMとスタッフの声が聞こえる賑やかな店内。

 

ゴクリと唾を飲み込む音が確かに聞こえました。

 

「そ、そんな事……ありえないですよ」
震える声、止まる手
私はいてもたっても居られず、スマホを手にメルカリへアクセスします。
「ボーチェ、ワックス、っと」
検索ワードを入れ、検索結果が表示されるわずかな時間、お客さんが不敵に笑うところ見ました。

「そ、そんな……そんな馬鹿な……」
狂気、としか言えない値段を前に、私はもうハサミを握る力は残ってませんでした。

 

「こんな値段、馬鹿げている……買う人なんて居るわけない……」
そう、最高値を更新というのは、1500円で買えたワックスに5000円という値が付けられていたということなのであります。
視界が歪むのを感じました。

しかし、メルカリというのは個人間同士のやりとり。
つまり値段設定は自由であるが買うのもまた自由ということになります。
そう、買う人が居なければ成立しないのであります。ノーカン!ノーカン!

 

 

あ……あ、あ、ああ……
アアアアアアアアアアアア!!!!

 

5000円……こんな事が……。
それも売れてる……。
我を忘れて静かに叫んだ私にお客さんはそっと呟きます。

 

「それだけ価値のあるワックスなんですよ」

 

その一言が私にもう一度ハサミを握る力をくれました。
お客さんは続けます。
「その値段で売ってても欲しくなる、それがボーチェなんですね」

その言葉は言い知れぬ気持ちに苛まれていた私への励ましのように聞こえました。
ワックスに5000円なんて馬鹿げている、いくらボーチェだろうと……。と私は無意識にボーチェを否定していたのです。
そんな自分に対する嫌悪感と、それでも3倍近くのプレミア値はやはりどうかしている、そんな葛藤を見透かされていたのかもしれません。

 

 

ふと腕時計を見ました。
時刻は夕方に差し掛かってます。
カットを始めてから30分ほどが過ぎようとしていました。

お客さんがまた静かに口を開きます。

「ゆすけさん、さっきから全然カット進んでないですよ」
その言葉を聞き、私は「申し訳ありません」と手を止めて頭を下げます。
最早私に、ハサミを握る力は残っておりませんでした。

過去の記事



おすすめ記事一覧

-コラム
-,

Copyright© PENTOSCISSOR 美容系アンテナメディア , 2019 All Rights Reserved.